== 下山淳 Diary ==


2009年6月の日記


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14(日) オレの気持ちなんかなぁ
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07(日) 清志ちゃん
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2009年6月7日の日記


清志ちゃん

激レアだろう!BOOKER T & THE M,G,'S [McLEMORE AVENUE]
歌なし全編インストによるビートルズ/アビーロードのカヴァーアルバム。
曲順はオリジナルと異なるのが味噌の脳。しかもこれ日本盤ですよ。




随分書こうか悩んだのだが書く事にした。

こんな事は自分の心の内にしまっておけば良いのであって、オレなんかがなんか言うような次元の話ではない。でもあるエピソードがあってそれを知らせたいなと思って。

オレは基本的にはRCには門外漢であって、自分が熱心なファンであったこともないし(でもなぜか”宝くじは買わない”とか、”シングルマン”は知っていた。後者は好きなアルバムだ)忌野清志郎の何かでもない。ただ彼の側を通り過ぎただけだ。

なのにこんなに彼が自分の中で大きいと知った時、愕然とした。

5/2の後は何も無いのに泣いてしまい、止まらなくなる。
彼に関連するような事柄が自分に触れるや否やまた泣いてしまう。
肉親が亡くなった時でもこんな事はなかったのに、だ。

悲しいのでも悔しいのでもない。ただ何か今まで感じた事の無い感情がこみ上げてくるのだ。
だから青山葬儀場にも行けなかった。自分がどうなるのか分かっていたからだ。

これは恐らく喪失感なのだろう。自分の中にあったものがいきなり無くなってしまったのだ。

ルースターズとRCは殆ど接点がないが、オレがルーザーや下郎をやっていた頃はわりと頻繁に清志ちゃんと会ったと思う。RCや2’3ズと一緒のイベントが多かったから。ホテルが一緒の時にドアをノックされて出たら清志ちゃんだったり。

勿論ライブを一緒にしたことも何度かある。彼がルーザーに飛び入りしたり、野音のイベントでオレと泉谷の大将と一緒に演奏したり。(辺りには金子さん家の2人の男の子がいたなぁ)

モニターから初めて聴く清志ちゃんの生の声はもの凄かった。今までに聴いた事の無い圧倒的な抜けの良さで迫ってきた。でも全然ヤカマシくないんだ。CDとかでは解らない、これが忌野清志郎なんだと思った。

そもそもはルーザーの頃、チャボが”清志!っっ清志っっ!”て言ってたからオレは”清志ちゃん”って言ってたんだけど勿論面と向かって言った事は無い。

清志ちゃんにしてもオレに会っても”おぉぉ”しか言ったこと無いんじゃないかな。”シモヤマ”なんて言われた事は殆ど皆無。いつも”おぉぉ”。
お爺ちゃんが孫に会った時みたいな。
一緒に居ても会話らしい事をしたことがない。かといって雰囲気が悪いのでもない。静かに微笑んでそこに居る。オレも何も言わないし。

沢田研二という人に初めて会ったのは89年の事だ。

”彼は眠れない”というアルバムのレコーディングで吉田建さんに呼ばれ、”ポラロイドGIRL"という曲のダビングに行った時、とりあえずワンテイク録ってプレイバックを聞いていたらオレと建さんとエンジニアしか居ない筈なのに誰かゆら〜っと居て。それが沢田さんだと気付くのに少し時間がかかった。来る予定じゃなかったように聞いていたので。

同じアルバムのセッションにまた呼ばれ、今度はリズム録りからで、メンバーはドラムがポンタさんでベースはその時初めて会った小原礼さん(実は大FAN)そしてオレ、そして清志ちゃん。

この日レコーディングする曲は忌野清志郎+小原礼の作詞/作曲でタイトルは”KI-MA-GU-RE"。

沢田さんと清志ちゃんのデュエット曲でなんと2人で一気に録ってしまうらしい。日本を代表するヴォーカリスト2人がデュェットあれまぁ、なんでオレがココに居るんでしょうか。でも清志ちゃんは”一緒ははずかしいから最初に1人で歌わしてくれ”ってことになってレコーディング開始。

1回か2回しかPLAYしなかったと思う。ここでもヘッドフォンから聴こえてくる清志ちゃんの声はもの凄い。チャボは毎日こんな凄い声の隣でギター弾いてたんだ。勿論沢田さんの声も凄かった。

OKだろうということでオレはそのままオーヴァーダヴ。すると清志ちゃんはニヤニヤしてオレに”見学させてもらってもいいですか”などと言うではないか。
別に構わないんだけど清志ちゃんはヘッドフォンを外してオレのマーシャルのキャビにもたれかかってる状態で見学される訳で。

今はそうでもない(自分が思ってるだけかもしれないが)けれど当時のオレはマーシャル爆音男であって、しかも時にはハイワットまで同時に持ち出してポンタさんを怒らせていたほど音が大きかった。ポンタさん:”シモ!オレを殺す気かー!てめー!”

”いーけどダイジョーブ?ヘッドフォンしないの”とオレ。清志ちゃんはニヤニヤ。しょーがない、RECスタート猛爆開始。しーらないっと。

ワンテイクで終わり、じゃー2人でプレイバック聴きに行くよねっ、とか思っていたら見学されていたボスはニヤニヤ笑いながら不思議な事を申された。

”今度、小さい音のやり方を教えてやるゼ”

???オレは何と答えていいか分からなかった。”あ〜そー”とか”えええ〜”とか言ったのかな。ボスは相変わらず微笑んでいたが目は笑っていなかった。なんだろう。今まで殆ど会話の無かった清志ちゃんの一言だ。何か重要なメッセージが込められているのだろうか。そしてオレはそれを感じ取る努力をしなければならないのだろうか。

”KI-MA-GU-RE"はその後沢田さんの唄を録って”彼は眠れない”に収録された。でもオレは清志ちゃんの言葉がずっと引っかかっていた。

”今度、小さい音のやり方を教えてやるゼ”

しばらくして何処でだったか忘れたがチャボに出会った。するとチャボは、”シモーっ!清志に言ってやってくれよ!アイツさーギターの音がデカクて何弾いてんだかぜっんぜんわかんないんだよ!言ってやって言ってやって!”

????。あっそーいえば確かに最近の(当時ね)清志ちゃんは小さいマーシャルの三段積みを手に入れてまたガンガンステージで弾き始めたって聞いたっけ。

じゃ、あの一言は?んんん?オレ、からかわれたの?何だろう。

"KI-MA-GU-RE"はまた沢田さんと一緒にPLAYしてるよ。

”今度、小さい音のやり方を教えてやるゼ”

もう、教えてもらえなくなっちゃったじゃないの清志ちゃん。






2009年6月7日(日) No.146

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